1 弁護士の選び方
交通事故を専門とする弁護士
交通事故の損害賠償問題は、簡易な事案から非常に複雑な事案まで幅広い類型が存在します。
簡易な事案においては、依頼する弁護士によって結果が大きく異ならず、まずまずの結果を得ることができる場合がありますが、複数の争点があって保険会社との交渉が難航すると、やはり依頼する弁護士によって得られる結果が大きく異なってきます。
弁護士の選び方について、ご質問を受けることもありますが、交通事故を専門的に取り扱っている法律事務所に依頼することが何よりも重要です。
コミュニケーションのとりやすい弁護士
また、同じく弁護士の選び方として、一般的に言えることですが、コミュニケーションをとりやすい弁護士かどうかといった点も重要です。
とくに、交通事故の事案では、治療中からご相談やご依頼をするケースが多く、事故直後から弁護士に依頼すると、実際に示談が成立するまでの期間は相当長くなります。
重傷であればあるほど、治療期間は長くなり、損害賠償金も高額になるため、依頼する弁護士との相性がとても重要になります。
依頼前の法律相談などを利用して、質問に丁寧に回答してもらえるか、またその回答が納得できる内容かどうかといった観点でよく話をした上で、コミュニケーションのとりやすい弁護士を選ぶことが大切です。
2 解決事例①
後遺障害10級:右肩腱板断裂後の肩関節可動域制限
後遺障害等級非該当から裁判で10級認定へ
当初提示額約90万円から1000万円の賠償が実現した事例
依頼者70代女性
ご相談内容
横断歩道を自転車に乗って横断していたところ、左折してきた乗用車と激突し、転倒時に右肩を強く打ち腱板断裂の損傷を負いました。
腱板断裂により肩の可動範囲が制限され、右肩はほとんど上がりません。
しかし、事故直後にMRIをとっておらず、MRI上腱板断裂を確認できたのが、事故後約1ヵ月を経過した頃であったため、保険会社は、右肩が上がらないのは年齢性の障害であるとして、事故との因果関係を認めてくれません。
そのため、後遺障害は存在しないものとして、損害賠償金が計算され、保険会社から提示された金額はわずか約90万円です。
高齢とはいえ、事故のせいで後遺障害を負ったのですから、しっかりとした補償をしてもらわないと、馬鹿にされた気分です。
ご依頼後(訴訟提起、後遺障害10級の獲得)
交渉や自賠責保険への請求を通じても、後遺障害等級は認定されませんでしたが、ご依頼者様と相談の上、後遺障害等級の認定を目指して、訴訟を提起しました。
訴訟準備にあたり、入通院先の病院からカルテなどを全て取り寄せ、また、大学病院などでMRIを再度撮影し、腱板断裂の立証に努めました。
また、左右両方のMRI画像を比べて、左肩が比較的良好であるのに対し、右肩のみに腱板断裂の所見があることに着目して、医師にも意見書を作成してもらいました。
その他にも、さまざまな主張立証を行って、障害が年齢性のものではないこと、すなわち、事故に基づく後遺障害(10級)であることの証明に成功しました。
後遺障害等級の認定により、損害賠償金は1000万円(解決金)となりました。
弁護士のコメント
大切なことは、「おかしい」「納得できない」と疑問に思う事柄については、妥協したり、泣き寝入りしたりせずに、まずは、弁護士などの専門家に相談することです。
近年は、自動車保険に弁護士費用特約が付いていることが多く、この保険により、自動車乗車中の事案に限らず、歩行中や自転車乗車中の事故の事案でも、弁護士費用やさまざまな実費(経費)が補償されます。
ご紹介事例のご依頼者様の保険にも、弁護士費用特約が付いていましたので、ご依頼者様の経済的な負担は「0」でした。
「おかしい」「納得できない」という皆様の直感に対して、適切なアドバイスを差し上げることができると思いますので、まずは、そのお気持ちをお聞かせください。
3 解決事例②
後遺障害12級:頚椎捻挫、神経根症
自賠責14級、保険会社提示額約150万円
→訴訟を通じて、12級獲得、解決金約700万円となった事例
依頼者50代男性
ご相談内容
症状固定後、保険会社の担当者から、医師に後遺障害診断書を作成してもらうよう言われ、医師に依頼しました。
その後、完成した後遺障害診断書を保険会社に提出したところ、1ヵ月くらい経過した時点で、担当者から後遺障害14級が認定されたと連絡がありました。
それと同時に、自分への賠償金が約150万円であると記載された計算書と、承諾書という示談書のようなものも郵送で届きました。
承諾書には、付箋で「署名・押印をお願いします」などと書かれていました。
最初は、「損保の担当者が作成したものであるから、賠償金はこのくらいでしょうがないのかな」という軽い気持ちでサインしそうになりましたが、首から左肩、左腕、左手指にかけて、非常に強いしびれが残っていて、車も運転できず、日常生活を送ることにも支障があるのに、本当に150万円で示談しないといけないのでしょうか。
保険会社から提示された賠償では到底納得できません。
どのようにしたらよいでしょうか。
ご依頼後(訴訟提起、後遺障害12級の獲得)
(綿密な打ち合わせ)
後遺障害14級を前提に金額交渉をすれば、300万円程度まで増額できる可能性がありましたが、ご面談を通じて、ご依頼者様の症状が非常に重いということに気付きました。
通常のむち打ち損傷では、頚部痛や若干の手指のしびれにとどまることが多いですが、お話をお伺いすると、日常生活では、症状のある左手で荷物を持ったり、細かな作業をすることが全くできない状況でした。
このような状況から、後遺障害等級を上げること、具体的には12級を目指すことを検討しました。
この点、自賠責保険の枠組みでは、12級の認定要件である、「他覚的所見」の審査が厳格であるため、異議申立てを行ったとしても、結論を覆して12級を獲得することは相当難しいと思われました。
また、休業損害の金額など他にも複数の争点があり見解の相違が非常に大きかったことから、ご依頼者様と繰り返し打合せを行い、訴訟を通じて、後遺障害等級を含むすべての争点を解決していくことを目指すことにしました。
(訴訟提起、後遺障害12級の立証)
訴訟準備段階では、再度、治療中に撮影したMRI画像を検証し、主治医の先生にも、他覚的所見があることや神経症状の発症が外傷(交通事故)を起因としていることなどについて意見書を作成してもらいました。
主治医の先生は、快く引き受けて下さったため、非常に効果的な意見書を証拠として提出することができました。
また、症状をより具体的に裁判官に理解してもらうため、ご依頼者様から繰り返しヒアリングを行った上で陳述書を作成し、裁判所に提出しました。
そして、さらに、ご依頼者様が裁判所で証言する機会(本人尋問)を設定するなど、効果的に立証活動を進めました。
以上の手続を経て、裁判所は、後遺障害12級の立証に成功していることを前提に、保険会社からご依頼者様へ約700万円の解決金を支払う旨の和解案を示し、双方同意の上、解決に至りました。
非常に大きな効果が出て、ご依頼者様も大変喜んでいました。
弁護士のコメント
自賠責保険の等級に不服がある場合、一般的には、異議申立てという手続をとります。
しかし、自賠責保険会社(実質的には自賠責損害調査事務所)にとって一度出た結果を覆すことは、一種の自己矛盾であるため、簡単には認めません。
また、自賠責保険の枠組みでは、加齢による変性所見が強いと、それのみをもって因果関係を否定ないし制限する傾向があるように思います。
これらの事情を理由として、後遺障害14級に対し異議申立てを行っても、12級に繰り上がることは、件数的に非常に少ないのが実情です。
ご依頼者様には、すでに脊柱管狭窄などの事故とは関係のない年齢性の変性所見もあったため、既存の変性所見に厳しい自賠責保険の審査では、なかなか12級を獲得することは難しいと思われました。
そこで、戦略的な見地から、訴訟を通じて、柔軟な主張立証を試みた方が進めやすいと考え、訴訟という選択をとりました.
結果的に、ご依頼者様にご納得いただけて、戦略が功を奏した事案となりました。