症状固定後あるいは後遺障害等級が確定した後、保険会社から被害者の方に、損害賠償額が提示されます。
提示される金額は、いわゆる自賠責基準であったり、その保険会社の社内の基準(任意保険基準)であったりすることがほとんどです(自賠責基準や任意保険基準については、「自賠責基準・任意保険基準・裁判基準について」をご参照ください)。
被害者の方が、法律上適正な損害賠償金を獲得するためには、損害を立証できる証拠をそろえて粘り強く交渉する必要があります。
以下、私が実際に取り扱った解決事例をご説明します。
1 解決事例①
後遺障害9級:脳挫傷後の高次脳機能障害
保険会社当初提示額約650万円→約3000万円に増額した事例
依頼者20代男性
ご相談内容
自転車対乗用車の交通事故で、信号無視の乗用車に勢いよく跳ね飛ばされ、頭部を地面に強く打ち、脳挫傷、全身打撲などのケガを負ってしまいました。
治療を継続しましたが、脳挫傷後の記憶力低下等がひどく、高次脳機能障害と診断され、自賠責保険で後遺障害は9級と認定されました。
9級認定後に保険会社から提示された損害賠償額は約650万円です。
専門的なことは全く分かりませんので、妥当かどうか教えてください。
ご依頼後(裁判基準による解決)
ご相談をお受けする際に、ご依頼者様が持参した計算表(保険会社が提示したもの)を見て、正直大変驚きました。
1割から2割程度の過失相殺があるとしても、保険会社の提示額は、約650万円と少額であり、自賠責保険限度額程度のものでした。
最近は、交通事故の事案に弁護士が積極的に介入しているため、重度の後遺障害等級が認定されている事案に対して、裁判などでは到底採用されない自賠責保険基準で提示された計算書を見ることは比較的少なくなったと感じていましたが、本件は、その例外であり、依頼者の無知に乗じた、少額すぎる提示と評価せざるを得ないものでした。
ご依頼をお受けした後は、示談交渉により、休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益などの項目について、裁判における勝訴同様のラインまで金額を引き上げ、過失相殺も若干の改善をするなどし、保険会社から合計3000万円の和解案を引き出しました。
2 解決事例②
後遺障害12級:右手骨折後の手関節可動域制限
賠償金約500万円の提示から約1600万円まで増額した事例
依頼者20代男性
ご相談内容
自転車乗車中に信号無視の乗用車と衝突しました。
頭部を強く打つなどの脳挫傷は免れたものの、衝突後の受け身をとる際に、右手を地面に強く突いたため、右手関節を骨折してしまいました。骨折は癒合しましたが、右手を動かせる範囲が狭くなり、痛みもあります。
後遺障害については、12級(手関節可動域制限)が認定されていますが、利き手である右手を怪我し、不自由な生活を強いられているのに、後遺障害に対する補償が少ないように思います。金額が妥当かどうか知りたいです。
ご依頼後(裁判基準による解決)
ご相談をお受けする際に、ご依頼者様が損害額計算書(保険会社が作成したもの)を持参されましたので、それを基にご相談をお受けしました。
いくつか争点がありましたが、大きな争点は、後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料でした。
保険会社の提示は、後遺障害逸失利益については、①ご依頼者様の事故前の収入を基礎に、②症状固定後10年の期間に対して補償し、③後遺障害慰謝料については、裁判基準(290万円)の70%程度を補償する内容となっていました。
交通事故を専門的に扱う弁護士であれば、上記①②③の内容を見るだけで、ほぼ瞬間的に「保険会社の提示が低いこと」「増額可能であること」がわかります。
私は、ご依頼者様に、
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以上の点をご説明し、目標金額を1500万円程度に見据えることを提案しました。
ご依頼者様は私の説明にご納得され、実際にご依頼を引き受けました。
その結果、目標どおり(実際には目標をやや上回る約1600万円)で示談による解決をすることができました。
本件は、約2ヵ月程度で増額→支払まで進み、金額のみならず、迅速性という観点からもご依頼者様にご満足いただけました。